ダ・ヴィンチ・コード

映画化で再び話題になっているダ・ヴィンチ・コード。約1年前に友人から借りて読んだけれど、寝る前に少しずつ読んでいたので、読み終わるのに一ヶ月近くかかってしまった。
今から考えると、徹夜してまで読みきるだけの面白さが無かったということか。

と言っても、決して面白くないわけではなく、キリストにまつわる知らないことが一杯書いてあった。しかし、文章の行間から「ハリウッドさーん、映画化してくださーい」というメッセージのにおいがぷんぷんする。念願かなって映画化され作者としては万々歳であろう。


主人公の男女が謎を追うわけだが、これが聖書に隠された謎でもダヴィンチの作品に隠された謎でもなく、追うのは現代人が宝の隠し場所を秘すために考えた暗号の謎である。このあたりが、歴史ミステリとして捉えるとすると物足りないというか、歴史を題材にはしているけど歴史ミステリではない。まあ、別に歴史ミステリである必要は無いし、ミステリとして必要な謎解きやどんでん返しもちゃんとあるので、悪い作品ではない。文庫化もされたし、キリストに興味のある人は読むべき本といえるだろう。


構造が似た作品で思い出すのは、「猿丸幻視行」。1980年の江戸川乱歩賞作品なので26年前の作品である。これも、いろは歌に隠された神宝をめぐる謎を男女(折口信夫と謎の一族の女)が追う話。こちらが追うのは現代の謎ではなく本物の歴史の謎である。また作中で柿本人麻呂と猿丸太夫の謎にも触れているが、これもダヴィンチ作品の謎がサイドストーリーになっているダヴィンチコードに似ている。エンディングも同じような終わり方。
まあ、ダン・ブラウン井沢元彦に“インスパイヤ”されたのでは?というところまでは似ていない。